「なぜ今の会社を辞めたいのですか」と聞かれると、理由は分かっていても答えに迷うことがあります。正直に話すと、評価が下がるのではないかという不安があるためです。
給与、上司との関係、業務負荷などの事情を、すべて「さらなる成長を希望しています」にまとめると、無難に聞こえるかもしれません。しかし、それだけでは次の仕事が本当に合うのかを判断できません。
企業側が理解すべきなのは、前職を批判するかどうかではなく、離れる背景、意思決定の過程、新しい仕事が合理的な期待に応えられるかです。候補者にとっても、同じ問題が繰り返されないかを確認する機会になります。
出来事、自分の対応、次に求める条件を分ける
理由がいくつもあっても、面接ですべての不満を話す必要はありません。次の三点を整理します。
- 何をきっかけに転職を考えたのか。継続的な問題と、一度の出来事を区別する。
- 実行可能で安全な範囲で、どのような調整や確認をしたのか。自分では変えられないことは何か。
- 同じ不一致を減らすため、次の仕事には何が必要なのか。
これは、十分に我慢したことを証明するための順序ではありません。安全でない環境や深刻な不適切行為がある場合、離れる判断自体が合理的なこともあります。面接での説明のために、すべての話し合いを終える義務があるわけではありません。
必要な事実を説明しながら、個人情報や繊細な出来事の詳細には境界を設けて構いません。信用を得るために、私的な情報を明かす必要はありません。
性格の良し悪しではなく、仕事との適合を考える
職務との適合には、能力が仕事に合うかだけでなく、必要な資源、意思決定の範囲、働く条件が得られるかも含まれます。「環境が合わなかった」だけでは、次の会社なら何が違うのかが分かりません。
以下は仮定の例であり、Talent Nexus の顧客事例ではありません。
新製品の開発チームを作るために入社した技術責任者が、実際には既存製品の苦情対応を続け、新規開発の資源が承認されない状況を考えます。「会社に展望がない」ではなく、次のように説明できます。
入社時の主な任務は新製品チームの構築でしたが、その後も資源は既存製品の支援に集中しています。上司と担当範囲の変更を話し合いましたが、現時点では近い時期にチームを設ける計画はありません。次の機会では、開発任務、予算、採用権限を先に確認したいと考えています。
前の会社が間違っていると決めつけず、選択の根拠と、次に確かめるべき条件が伝わる説明です。
上司との対立は、仕事の状況として説明する
「上司が感情的」「同僚と仕事がしにくい」は実感かもしれません。しかし、面接官には全体の背景がなく、その言葉から相手の人物像を判断することはできません。
どこで意見が分かれ、どの仕事に影響し、どう対応し、何を変える必要があったのかを説明します。方針が頻繁に変わったなら、要件変更と納期の衝突、優先順位を確認するための試み、実行可能な合意に至らなかった理由を述べます。成熟して見せるために、すべてを自分の責任にする必要もありません。
OPM の構造化面接の指針は、職務に関係する行動の根拠に注目しています。人物へのラベルではなく、具体例を準備する際の参考になります。
すべての面接官がこの方法を使うわけではありません。個人への評価を求められ続けた場合も、仕事の状況と次の職務に必要な条件へ話を戻すことができます。
給与が理由でも、何を比較しているかを明確にする
待遇の改善を求めることは、それ自体で不適切な動機ではありません。金額だけでなく、責任、勤務時間、変動報酬の不確実性、今後の業務を合わせて考えることが重要です。
例えば、「担当が地域横断の案件まで広がった一方、職位や待遇は変わっていません。今回の責任範囲と全体の待遇がどう対応しているかを知りたい」と説明できます。主な理由が給与なら、実際には共感していない使命について話を作る必要はありません。
企業は期待が予算内かを確認できますが、待遇の相談を仕事への意欲不足と同一視すべきではありません。候補者も、報酬の増加に望まない条件が伴っていないかを確かめましょう。
退職理由を、次の会社への質問に変える
意思決定が不明確だったなら、重要な判断を誰が担い、意見が分かれたときどう解決するかを尋ねます。勤務時間が問題だったなら、通常時、繁忙期、支援体制を確認します。成長機会が乏しかったなら、仕事の割り振りや実際に行われている研修・異動について聞きます。
「人材を大切にしていますか」だけでは、魅力的な答えが返りやすくなります。最近の具体例を聞き、面接官ごとの説明が一致しているかにも注目してください。
まだ設計中の職務が悪いとは限りません。ただし、決まっている条件と未承認の計画を分けて話す必要があります。そうしなければ、期待が約束として受け取られることになります。
企業は定型的な回答だけを評価しない
「成長したい」という答えしか認めないと、本当の適合上の問題を捉えにくくなります。面接官は事実と条件を確認しつつ、短期の在籍を直ちに不安定さとみなしたり、職務に関係しない私的な理由を求めたりしないことが大切です。
候補者が準備するべきなのは、反論の余地がない退職理由ではありません。正直で、必要な境界があり、次の仕事の条件について話せる説明です。過去を弁護するよりも、次の選択の根拠を増やすことを目指しましょう。

